先日、マラソン大会の沿道で交通整理をする仕事をしてきた。
この仕事、事前にオンライン説明会があり、資料には従事者の名簿も添付されていたらしい。
ところが、説明会当日、私は左目に腫れ物ができてしまい、病院へ行くために欠席していた。
ちなみに、ものもらいかと思っていたけれど、実際にはビーフシチューを食べ過ぎて目の近くにニキビができただけだった。
……ということにしておこう。
その名簿を見た友達が、私にたくさん連絡をくれていた。
そう、今回の仕事は知り合いが結構参加する仕事だったのだ。
だから、仕事そのものはそれほど楽しみにしていたわけではない。
楽しみだったのは、むしろ仕事が終わってから。
ね?
朝7時、駅前にはすでに長い列
当日の集合時間は7時半。
ところが、朝7時には、駅前にすでに長い列ができていた。
マラソンのスタート地点へ向かうバスを待つ人たちである。
交通整理をする私たちも朝早くから仕事だけれど、走るランナーたちも早い時間からお疲れ様です。
そんなことを思いながら、従事者の集合場所へ向かった。
……が。
説明をしてくれるはずの人が、誰も来ない。
あれ?
あの場には100人くらいいただろうか。大学生も来ていて、私の後ろで何やら話をしていた。
耳を傾けていると、これがなかなか面白い。
「職員はTシャツもらってるのに、俺らもらえないのケチくね?」
「責任者来ないのだるい。もう帰る?」
「タイミーで交通整理するボランティア募集してるよ? まじ!? 俺ら無償なのに、お金もらって、こっちでも登録する方がよくね?」
……若い。
いや、言っていることは分からなくもない。
責任者が来ないまま待たされているのだから、文句のひとつも言いたくなるだろう。
資料には、責任者が来て説明をすることになっていた。
しかし、待っても待っても来ない。
結局、職員の一人が大会本部に連絡してくれたところ、
「そこには誰も行かない」
と言われたらしい。
……なんで?
説明する予定だったのでは?
そんな疑問を残したまま、私たちはそれぞれの持ち場へ流れていった。
そして規制開始時間になり、警備服を着た本業の警備員さんたちが交通規制を始めた。
私たちも、午前8時50分ごろから交通整理をスタートした。
応援の熱気がすごい。でも、誰が誰だか分からない
総務課の車両、広報車、パトカーなどが通過し、しばらくすると白バイがやってきた。
そして、最初のランナーが通過。
どうやら、私が従事していた場所は、応援する人たちにとって絶好のポジションだったらしい。
周囲には、マラソンに熱心な奥様方が集まっていた。
「あだちくん、がんばれー!」
「キャー! ミキティー!」
ものすごい声援である。
ゲストランナーが通過するときなどは、さらに大盛り上がり。
一方、私はというと。
誰がゲストランナーなのか、まったく見分けがつかない。
周囲の熱気は十分に伝わってくるのだけれど、肝心の人物が分からないのである。
みなさん、よく分かるなあ。
そんなことを思いながら、沿道の交通整理を続けていた。
新聞を持った市長が通過した
そんなときだった。
一人の背広を着たおじさんが、新聞を持って通過していった。
そして、こちらに声をかけてきた。
「お疲れ様です。おぉ、今日は従事してるんだね」
……ん?
「あれ、市長さん、お疲れ様ですー」
まさかの市長である。
いや、待って。
市長、手に新聞を持っている。
そこのローソンで買ってきたの?
というか、どこからやってきた?
市長はそのまま、とあるマンションに入っていった。
応援熱心な奥様達は、誰も市長に見向きもしない。
隣の持ち場にいた後輩と、思わず話が盛り上がる。
「市長の家、あのマンションなんだ!?」
……いや、そこ?
市長がどこから来たのかも、なぜ新聞を持っていたのかも分からない。
ちなみに、私は自慢じゃないけれど、今まで市長室に5回くらい入ったことがある。
今も毎月数回、秘書課のフロアへ行く仕事があるので、市長とは意外と顔見知りだったりする。
だからこそ、沿道で突然会っても、普通に「あ、市長さん、お疲れ様ですー」と声をかけられるわけである。
……いや、冷静に考えたら、なかなか不思議な状況だ。
市長、今度はマラソンTシャツ姿で登場
しばらくすると、市長が再び登場した。
今度は、ちゃんとマラソンのTシャツを着ている。
しかも、後ろには奥様もいらっしゃる。
おお、今度はマラソン仕様だ。
ところが、通過していくランナーたちは、市長に気づかない人が大半、9割だった。
その一方で、気づいた1割の人は、市長とハイタッチをしてうれしそうに通過していく。
あの様子を見ると、市長も市民との交流を楽しんでいたのかもしれない。
……とはいえ、最初に新聞を持って通過したときの謎は残ったままである。
市長は、いったいどこから来たのか
この話を愛する人にしたところ、
「市民と交流して政治家だね~。でも、そんな時間に家にいたとか、開会のあいさつしなかったのかな?」
と言われた。
確かに。
市長はスタート会場にいたのだろうか。
資料を確認してみたけれど、そのあたりの情報は見当たらない。
もしかしたら、スタート会場から車で帰ってきて、私の後ろを通過したのだろうか。
それとも、別の場所から来たのだろうか。
……分からない。
ただ、そのときの様子は、ちゃっかりスマホのカメラで撮影しておいた。
(ここには載せれないけれども)
そして、仕事が終わったあとのお楽しみの時間。
集まった友達に、その写真を見せて盛り上がったのである。
そもそも、今回の仕事は、終わってから知り合いと会えるのが楽しみだった。
交通整理という仕事自体は、もちろんきちんとやった。
でも、振り返ってみると、印象に残っているのは、大学生たちの自由な会話だったり、沿道の熱心な応援だったり、新聞を持った市長だったりする。
こういうことがあるから、何気ない仕事の日も、案外おもしろいのかもね。
追伸
翌日のSNSには交通規制により不便な扱いを受けたらしき人の、マラソンの中止、廃止を求める投稿が目についた。
今年、市長を含めてお金の使い方で新聞に載り批判を受けたことも尾を引いているようで、
主張は大きかった。
あの日、市長もマラソンを見ていたのだから、直接伝えれたらよかったのにね。
